月刊コミックバンチに連載中の『死役所』最新巻12巻を読みましたので、あらすじと感想を紹介します!
お客様は神様…ならぬ仏様です。
死役所とは、他殺、自殺、老衰…など様々な理由で亡くなった人たちが訪れる場所。
地上の市役所同様、自殺課、他殺課、老衰課などと担当の課も分かれています。
そこで総合案内として働くシ村は、笑顔の胡散臭い慇懃無礼な職員。
死役所 第11巻までのおさらい
さて、11巻は裁判傍聴が人生の転機となった測量士、かつての恩師との死別に直面した中年男性、それから居場所を求め異次元へと旅立った少女のお話しでした。
12巻ではどのような死者たちが登場するのでしょうか?
死役所 第12巻のネタバレとあらすじ
今日も死役所には、何らかの理由で亡くなった人がやって来ます。
1人目のお客様もとい仏様は「庇護亜季保(ひごあきほ)」という若い女性です。
まずは、死役所にやってくる前の事情が語られるのですが…
亜季保はハローワーク(職業安定所)に通う失業中の女性でした。
気管支系の持病があるらしく、ハローワークの職員と話しているときに咳き込んでしまい、吸入薬を使って発作を抑えます。
「発作はよく起こるんですか?就業は出来る状態なんですか?」
と職員に聞かれる亜季保。
大丈夫ですと答えると、職員から働き口の候補を渡されますが、亜季保が希望するデザイン職ではなく事務職(会計)での仕事でした。
「検討します」
と答える亜季保でしたが、応募する気はない様子。
更に、雇用保険の給付も今回で終了と職員に宣言されて、この先の収入がないことに不安を覚えるのでした。
実は、亜季保は父親と一緒に暮らしていました。
元々は一人暮らしだった亜季保の元に、年金暮らしの父親が転がり込んだ形です。
亜季保が働いていたときは余裕があったので、同居もそれほど苦になりませんでしたが失業した今となってはそれも悩みの種。
今日も少ない年金の半分をパチンコに使ってしまったらしい父親に、亜季保は怒りを覚えます。
最終的に家賃を半分入れてほしいと亜季保は土下座をして頼みますが、父親も持ち金がなく二千円を受け取るだけで終わってしまうのでした。
収入がなく困った亜季保は風俗の仕事を考え、スマホで検索をしてみます。
けれども、持病持ちの自分にできるわけもなく諦めて自分の家にある物をネットで売ってしのごうと考えるのでした。
ですがとうとうお金も尽きてしまいます。
父親の勧めもあり生活保護を役所に申請しに行くことにしました。
そこでの職員の冷たい対応に、肩身の狭さを感じる亜季保。
そして亜季保は…
というお話しです!
2人目は「こうせいももこ」という1~2歳くらいの子が出てきます。
この子は死役所で迷子になったらしく、しかもまだしゃべれないので死役所の中でどこの課が担当なのかを探すことになります。
また「こうせいももこ」が、本当の名前ではないことも判明しました。
色々な課を周るうちに、この子の死んだ理由が虐待だとわかるのですが…
3人目の主人公は実家の稼業を手伝い牛乳配達をする「金子行亮」という青年です。
冒頭から素行の良くない様子が描かれています。
そこで爆弾事件が起こり、行亮は警察に連れていかれて毎日厳しい尋問を受けます。
様々な言い方で行亮は警察に責められとうとう罪を認めてしまうのですが、なんと真犯人は別にいたのです。
そして、死役所の総合案内シ村もまた過去に冤罪で死刑になったことを話そうかとするところで次巻につづく!となります。
死役所 第12巻の感想と考察
以上 3話ともニュースで話題になったような、どこかで聞いたような事件ばかりです。
皆亡くなってから死役所へ辿り着くのですが、そこでわかる真実や死役所の職員からかけられる言葉というものが胸をえぐります。
1人目のおそらく喘息持ちでハローワークに通う亜季保の気持ちは共感できる部分がある一方で、自分だったらこうするのだけど…という部分もありました。
例えば、一人暮らしで何も収入がない事の不安、職員からの心無い言葉に傷つくことなど経験のある方もいるのではないでしょうか。
ハローワーク(昔の職安)は自分も行ったことありますが、そこで怒鳴っている人を見たこともありますし、そもそも相手は公務員。
こちらのつらい事情などとは無縁なのですから、事務的に処理されたりすることもあります。
また、シ村が「聞かれませんでしたので」と実はこういうことがあると死役所に来た相手に教えないパターンがありましたが、このハローワークの人もそうだろうなとあとがきでわかります。
(あとがきで傷病手当金について触れていますが、おそらくハローワークの職員が亜季保に就業できる状態なのか?と聞いたのもその辺りと関係しているのではないかと予想します。)
生きづらさを感じる今の世の中ですが、この亜季保もそんな中の一人です。
亜季保の死因は話中で明らかとなっていますが、とても切ない最期でした。
死役所のシ村は、いつも慇懃無礼な態度で死者に当たりますが、亜季保に間接的にかける言葉には温かみが感じられます。
同様にハヤシの呟く言葉がまさに現代を感じさせるといったところでしょうか。
今を生きている私たちに、死者が語り掛ける物語と言えます。
2人目の子どもの話は、最近ニュースで聞いたような胸糞な内容でしたが、これが現実に起こっていることなんですよねぇ…
現実でもそうであるように、母親が子供を助ける為に何もしないのが残念でなりません。
亡くなったお子さんにはせめて安らかに…と願うばかりです!!
3人目の話は13巻に一部内容が持ち越しとなっています。
シ村は爆弾事件の真犯人をわかっているようでしたが、それは明言されてはいません。
ですが、注意深く読んでいれば恐らくこの人ではないかなぁ…というのがわかると思います。
(予想と違っているかもしれませんが!)
ちょっと刑事ドラマのような作りの回で、この話はオススメです!
13巻ではどうもシ村の秘密が一部わかりそうな展開ですが、そのヒントが3人目の話にあるのだろうかと何度も読み返してしまいます。
いつも張りついたような胡散臭い笑顔のシ村ですが、素顔を少し覗かせていました。
全体を通した読後感は爽快というよりも、現代社会の隅で起きる事件や出来事にスポットを当ててそこから考えさせられる作品です。
特に現代社会で生きづらさを感じている多くの人々にオススメいたします!!